2015年7月30日木曜日

約束の海

山崎豊子。

著者の遺作となった小説。
残念ながら三部構成のうち第一部のみが完成している未完の絶筆となった。

巻末には著者が構想していた第二部、第三部の案を山崎プロジェクト編集室がまとめた『約束の海』その後−が掲載されている。

海上自衛隊の士官として有望視されている花巻朔太郎は、最新鋭潜水艦くにしおの船務士としてその任務についていた。

自衛艦隊による展示訓練を終えたくにしおは母港のバースへの帰投途中で民間の遊漁船第一大和丸と衝突し、30名もの死者を出す。

自分を責める朔太郎は自衛隊の職を辞する覚悟を決めるが、戦争の話を一切しない父との久し振りの再開で交わした言葉に新たな問いを突きつけられるのである。

恋心を寄せるフルート奏者の頼子や、朔太郎に近づきたい食堂の看板娘サキ、登場人物も個性的で、今後の展開が大いに期待されただけに残念でならないが、著者のご冥福をお祈りする。

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